婦人科がん検診
Gynecological Cancer Examination婦人科腫瘍専門医による
安心できる婦人科がん検診
実際の婦人科がんの検診の流れ
当クリニックでは婦人科がん検診を積極的に行っています。
皆さん、婦人科の診察は何だか不安でなるべく避けたいですよね。初めて診察を受ける方、内診に不安がある方は遠慮なくスタッフにお伝えください。
診察内容について十分に説明させていただきます。実際の診察は1分程度です。 当クリニックでは、すべて婦人科腫瘍専門医が診察を担当します。
婦人科がんの正確な検査、診断、治療へのアプローチを最短で行います。また子宮体がん、卵巣がんに不安をお持ちの方もお気軽にご相談ください。
Cervical Cancer Examination子宮頸がん検診について
実際の子宮頸がん検診の流れ
検診当日はまず問診表の記載をお願いいたします。
-
01
問診
- 月経の状態
- 過去の妊娠や出産
- 性器出血・帯下などの症状
-
02
診察
- 子宮頸部細胞診(またはHPV検査)
- 内診
- 経腟超音波検査(子宮、卵巣の精査)
- 必要時は超音波検査
- 血液検査(腫瘍マーカー:CA125、CA19-9、CEAなど)
-
03
検査結果の通知
- 市町村から子宮頸がん検診の結果が数週間で郵送
- 検査結果で異常があれば精密検査が可能な医療機関を受診
もし子宮頸がん検診で異常が見つかったら?
もしあなたに子宮がん検診で“異常あり”の通知が届いたらどうしますか?
「どこに相談したら良いのか?」、「急いで病院を受診した方がよいのか?」などたいへん不安になります。
子宮頸がん検診で“異常あり”との通知が来た場合にはまず精密検査のできる婦人科を受診してください。
子宮がんの精密検査が可能な施設は地方自治体や各県医師会のホームページで検索できます。
詳しくは下記の「熊本県医師会」をご確認ください。
もし子宮頸がん検診で異常があれば…
実際に婦人科受診をした際にどのような流れで精密検査が進められるのでしょうか?
はじめに婦人科では検査結果の内容を確認させていただきます。異常の内容によって検査アプローチが異なります。
- 細胞診異常がある
- 卵巣が腫れている
- 子宮筋腫が疑われる
- 腟炎がある
検査結果の記載には分かりにくいものも含まれます。不明な点を医療機関で確認されることをお勧めします。
子宮頸がんの精密検査について
では子宮頸がんの精密検査はどのようなものでしょうか?
精密検査の内容
-
コルポスコピー(拡大鏡)で子宮の入り口を確認
細胞の異常を指摘された場合にはコルポスコピーといわれる拡大鏡で子宮の入り口を確認します。
その際に子宮の入り口にお酢(酢酸)を浸します。お酢により病気の部分が白く浮き上がって見えやすくなります。
検査の際にお酢を使うので少ししみる感じがあるかもしれません。 -
生検
コルポスコピーで確認して病気が疑われればその部分を小さく生検します。
チカっとして少し痛みがあり出血する場合があります。
この生検した組織を顕微鏡で確認することにより初めて診断がつきます。
子宮頸がん・子宮頸部異形成など… -
HPV検査
ヒトパピローマウイルス(HPV)の検査を行う場合があります。
子宮頸がんのほとんどは性交渉によるHPV感染が原因です。
HPV感染の有無によりその後の受診間隔が変わります。
HPV検査は子宮の入り口をブラシで擦って細胞採取することで終了します。
結果は1週間程度かかります。
検査結果の説明
精密検査(生検、HPV検査など)の結果説明は約1週間後に行います。
治療が必要な場合には患者様の意向を十分に踏まえて当院での治療(レーザー治療等)や総合病院へのご紹介を行います。
今後の方針に関しては「婦人科がん患者さんのかかりつけ医」として総合的にご相談いたします。
子宮頸がん検診の副効用
検診で見つかる子宮のがん以外の病気は?
受診者8,630名のうち子宮筋腫368名(4.3%)、子宮頸管ポリープ115名(1.3%)、卵巣腫大94名(1.0%)を認めた。
子宮頸がん検診では子宮のがんや前がん状態をスクリーニングするばかりでなく、他の婦人科疾患が見つかる場合があります。2018年の調査で熊本市の子宮頸がん検診を受けた8,630名のうち検診の際に368名(4.3%)に子宮筋腫が見つかっています。さらに子宮頸管ポリープが115名(1.3%)、卵巣の腫大が94名(1.0%)に指摘されました。
その他、萎縮性腟炎、カンジダ腟炎などの炎症やコンジローマなどの性感染症の有無がわかる場合もあります。検診で見つかった子宮筋腫や卵巣腫大のすべてが治療対象となるわけではありません。しかし、精密検査のうえ手術や投薬などの治療が必要となる場合もあります。
子宮頸がん検診で異常があった場合でもさまざまな理由で婦人科受診が先送りになってしまうことがあります。
気づいたときには病状が進行しているケースもあります。
”異常あり”の検診結果を受け取った場合はなるべく早く婦人科にご相談ください。
Day surgery日帰り手術
日帰り婦人科手術
日帰り婦人科手術としてCO2レーザーによる子宮頸部レーザー蒸散術、尖圭コンジローマレーザー蒸散術を行っています。
バルトリン腺嚢胞の手術、子宮内膜掻把術、流産手術、人工妊娠中絶術を行います。
レーザー治療は日帰り手術が可能で入院が不要です。婦人科では子宮頸部高度異形成、ハイリスクな子宮頸部中等度異形成、尖圭コンジローマ、バルトリン腺嚢胞など多様な疾患にレーザー治療は有用です。当院でも開院以来、CO2レーザーを導入し多くの患者様に治療を行ってまいりました。治療は5-10分程度で終了し、基本的には痛みが少ないため無麻酔で可能な手術ともいわれています。一方で、レーザー治療中に痛みを訴えられる患者様もいらっしゃいます。当院では「痛くないレーザー治療」を目指します。傍頸管麻酔や鎮痛剤を用いて治療による痛みを軽減し、ストレスなく手術を受けていただくように工夫しています。麻酔薬などにアレルギーがある方は事前にお知らせください。レーザー治療に対する不安や質問がある方は遠慮なくスタッフにお伝えください。スタッフ一同、患者様が安心して治療を受けていただけるように全力でサポートいたします。
Prophylactic Vaccine子宮頸がん予防ワクチン
HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種
子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)接種とりまとめ
キャッチアップ接種期間:3年間(令和4年4月1日〜令和7年3月31日)
2価、4価ワクチン3回接種が未完の場合は原則は同じワクチン接種であるが、残りの接種を9価ワクチン接種に変更することは可能である。
12-15歳未満の9価ワクチン接種2回(初回から6か月以上間隔をあける、13か月以内に接種終了)
-
日本の子宮頸がんを取り巻く状況
日本では年間約11,000人の女性が子宮頸がんと診断され、残念なことに約3,000人の方が亡くなっています。また子宮頸がんは“マザーキラー”とも呼ばれ、とくに20-30歳代の若い女性が子宮頸がん全体の約2割を占めています。
-
子宮頸がんの予防について
子宮頸がんの予防には二段階あり、まずHPVワクチン接種による一次予防に始まり、つぎに子宮頸がん検診による二次予防と続きます。一方で、日本の子宮頸がん検診の受診率は約40%程度であり、これは海外の国々と比較して著しく低い状況です。検診方法の違いはあるものの、アメリカやイギリスでは約70-80%の子宮頸がん検診受診率です。日本で子宮頸がん検診受診率が低迷する中で、一次予防であるHPVワクチン接種の重要性はさらに高まっています。
-
HPVワクチン接種について
HPVワクチン接種は効率に浸潤性子宮頸がんを予防します。スウェーデンで約167万人の女性を調査し、17歳未満までに4価HPVワクチン接種が完了した場合には、浸潤性子宮頸がんの約88%を予防できたことが報告されました。また同様のデータがイギリスやデンマークからも報告されています。HPVワクチン接種が前がん状態を減少させることのデータは以前から数多く報告されていましたが、浸潤性子宮頸がんを予防するデータを得るためには10年以上にも渡る長期の研究が必要です。スウェーデンなどの研究は子宮頸がんを予防する上で、歴史的に重要な研究結果と位置付けられています。
-
日本のHPVワクチン接種の状況
HPVワクチン接種後の“多様な症状”の出現により厚生労働省による“積極的勧奨の一時差し控え”が行われました。2013年4月よりHPVワクチン接種の定期接種が開始されましたが、わずか2か月でブレーキがかかってしまいました。以後9年間、厚生労働省を中心としてワクチンの安全性に関する様々な調査研究が行われました。最も有名な調査の一つとして、名古屋スタディ―があります。名古屋市の約3万人の女性を対象として、HPVワクチン接種を行った方と接種を行っていない方にワクチン接種による副反応と考えられた24項目の“多様の症状”に関する調査が行われました。この結果としてワクチン非接種にも接種者と同様な“多様な症状”の出現が確認されました。以上よりHPVワクチン接種と“多様の症状”との間には因果関係は証明されないとの結論に至りました。2021年11月12日に開催された厚生労働省の会議において、HPVワクチン接種に関して「安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回る」との見解が出されました。
その後、2022年4月より厚生労働省はHPVワクチン接種の“積極的勧奨の再開”に踏み切りました。現在、キャッチアップ接種および2023年4月からは9価ワクチンの公費接種も開始されています。
しかし、現時点では日本ではWHOが掲げる15歳までに90%の女子にHPVワクチン接種を完了するという目標には全く達していません。2023年7月に熊本市の中学校の先生方の協力のもと、HPVワクチン接種に関する認知度調査を独自に行いました。結果として中学生女子123名中56名(45.4%)が「HPVワクチンを知らない」と回答しました。接種者が増える夏休み直前にもかかわらず、約2人に1人はHPVワクチンについて認識さえしていませんでした。さらに男子56名に同様な質問をしたところ40名(71.4%)がHPVワクチンのことを全く知りませんでした。
当然、HPVワクチン接種は個人の希望で行われます。しかし、まず何よりもHPVワクチン接種について正しく知っていただきたいと思います。さらにご家族で一度、接種について考える機会を持っていただきたいと思います。
科学的および疫学的データを下にHPVワクチン接種が広く浸透し、一人でも多くの女性が子宮頸がんで苦しまないことを強く願います。