お知らせ
HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種で知っておきたいこと。
日本では年間約11,000人の女性が子宮頸がんと診断され、残念なことに約3,000人の方が亡くなっています。また子宮頸がんは“マザーキラー”とも呼ばれ、とくに20-30歳代の若い女性が子宮頸がん全体の約2割を占めています。
子宮頸がんの予防には二段階あり、まずHPVワクチン接種による一次予防に始まり、つぎに子宮頸がん検診による二次予防と続きます。一方で、日本の子宮頸がん検診の受診率は約40%程度であり、これは海外の国々と比較して著しく低い状況です。検診方法の違いはあるものの、アメリカやイギリスでは約70-80%の子宮頸がん検診受診率です。日本で子宮頸がん検診受診率が低迷する中で、一次予防であるHPVワクチン接種の重要性はさらに高まっています。
HPVワクチン接種は効率に浸潤性子宮頸がんを予防します。スウェーデンで約167万人の女性を調査し、17歳未満までに4価HPVワクチン接種が完了した場合には、浸潤性子宮頸がんの約88%を予防できたことが報告されました。また同様のデータがイギリスやデンマークからも報告されています。HPVワクチン接種が前がん状態を減少させることのデータは以前から数多く報告されていましたが、浸潤性子宮頸がんを予防するデータを得るためには10年以上にも渡る長期の研究が必要です。スウェーデンなどの研究は子宮頸がんを予防する上で、歴史的に重要な研究結果と位置付けられています。
一方で、ワクチン接種後の“多様な症状”の出現により厚生労働省による“積極的勧奨の一時差し控え”が行われました。2013年4月よりHPVワクチン接種の定期接種が開始されましたが、わずか2か月でブレーキがかかってしまいました。
以後9年間、厚生労働省を中心としてワクチンの安全性に関する様々な調査研究が行われました。最も有名な調査の一つとして、名古屋スタディ―があります。名古屋市の約3万人の女性を対象として、HPVワクチン接種を行った方と接種を行っていない方にワクチン接種による副反応と考えられた24項目の“多様の症状”に関する調査が行われました。この結果としてワクチン非接種にも接種者と同様な“多様な症状”の出現が確認されました。以上よりHPVワクチン接種と“多様の症状”との間には因果関係は証明されないとの結論に至りました。
2021年11月12日に開催された厚生労働省の会議において、HPVワクチン接種に関して「安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回る」との見解が出されました。
しかし、現在の詳細なHPVワクチンの接種率は不明ですが、WHOが掲げる15歳までに90%の女子に接種を完了するという目標には全く達していません。
2023年7月に熊本市の中学校の先生方の協力のもと、HPVワクチン接種に関する認知度調査を独自に行いました。結果として中学生女子123名中56名(45.4%)が「HPVワクチンを知らない」と回答しました。接種者が増える夏休み直前にもかかわらず、約2人に1人はHPVワクチンについて認識さえしていませんでした。さらに男子56名に同様な質問をしたところ40名(71.4%)がHPVワクチンのことを全く知りませんでした。
当然、HPVワクチン接種は個人の希望で行われます。しかし、まず何よりもHPVワクチン接種について正しく知っていただきたいと思います。さらにご家族で一度、接種について考える機会を持っていただきたいと思います。
科学的および疫学的データを下にHPVワクチン接種が広く浸透し、一人でも多くの女性が子宮頸がんで苦しまないことを強く願います。